市場メカニズムの国際動向
京都メカニズムについて
京都議定書は、1997年、国連気候変動枠組条約 (United Nations Framework Convention on Climate Change: UNFCCC) 第3回締約国会議 (Conference of the Parties to the UNFCCC:COP) で採択されました。京都議定書では、UNFCCCの附属書Ⅰ国 (先進国) による温室効果ガス (Greenhouse Gas:GHG) の排出量削減の数値目標が定められています。
背景
1992年5月、ニューヨークで開かれた第5回気候変動枠組条約交渉会議(Intergovernmental Negotiating Committee for a Framework Convention on Climate Change :INC) の再開会合において、「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」を究極的な目的とした国際的な取り組みを定めた、気候変動枠組条約が採択され、1994年3月に発効しました。1995年にベルリンで開催されたCOP1では、COP3までに2000年以降の先進国のGHG排出抑制及び削減取り組みを議定書等により定めることが合意され、国際交渉が続けられたのち、1997年12月COP3で京都議定書が採択されました。また、議定書の運用ルールは、2001年7月ボンCOP6再会会合で合意されました。
京都議定書に関わる国際交渉の経緯※1
年月 | 会議名 | 動き |
---|---|---|
1992年05月 | INC5再開会合 | 気候変動枠組条約採択 |
1994年03月 | 気候変動枠組条約発効 | |
1995年03月 | COP1 | ベルリン・マンデート採択 |
1997年12月 | COP3 | COP3 |
2000年11月 | COP6 | ― |
2001年07月 | COP6再開会合 | ボン合意 |
2001年11月 | COP7 | マラケシュ合意 |
2005年02月 | 京都議定書発効(2月16日) | |
2005年12月 | COP11&CMP1※2 | ― |
2007年12月 | COP13&CMP3 | バリロードマップ採択 |
2009年11月 | COP15&CMP4 | コペンハーゲン・アコード採択 |
2010年11月 | COP16&CMP6 | カンクン合意 |
2011年11月 | COP17&CMP7 | ダーバン結果 |
2012年12月 | COP18&CMP8 | ドーハ気候ゲートウェイ |
2014年12月 | COP20&CMP10 | 気候変動のためのリマ声明 |
2015年11-12月 | COP21&CMP11 | パリ協定 |
※1.詳細についてはUNFCCCウェブサイト[http://unfccc.int/2860.php]を参照
※2.京都議定書締約国会合、CMP: Conference of the Parties serving as the meeting of the Parties
概要
京都議定書(1997年に採択、2012年に改定)では、附属書Ⅰ国に対し1990年(但し市場経済移行国については1990年以外を基準年としても構わない)のGHG排出量を基準として、第1約束期間 (2008年~2012年)、ならびに第2約束期間(2013年~2020年)のGHG排出量について法的拘束力のある排出削減の数値目標を定めました。
基準年排出量より計算される初期割当量 (Assigned Amount) は、割当量単位 (Assigned Amount Unit: AAU) と呼ばれ、各国の排出枠となります。
現在対象となっているGHGは、二酸化炭素 (CO2)、メタン (CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン (HFCs)、三フッ化窒素(NF3)、パーフルオロカーボン (PFCs)、六フッ化硫黄 (SF6) の7種類、この他に1990年以降の人為的な植林・再植林については、吸収源として目標達成に含めることができるとされました。更に柔軟性措置として「京都メカニズム (Kyoto Mechanisms)」が導入されました。なお、2012年8月31日現在、192の国およびEUが京都議定書に加入しています。
附属書I国リスト(削減目標%)
国 | 第一約束期間 | 第2約束期間 |
---|---|---|
オーストラリア | 8 | -0.5 |
オーストリア | -8 | -20 |
ベラルーシ | ― | -12 |
ベルギー | -8 | -20 |
ブルガリア | -8 | -20 |
クロアチア | -5 | -20 |
キプロス | ― | -20 |
チェコ | -8 | -20 |
デンマーク | -8 | -20 |
エストニア | -8 | -20 |
EU | -8 | -20 |
フィンランド | -8 | -20 |
フランス | -8 | -20 |
ドイツ | -8 | -20 |
ギリシャ | -8 | -20 |
ハンガリー | -6 | -20 |
アイスランド | 10 | -20 |
アイルランド | -8 | -20 |
イタリア | -8 | -20 |
カザフスタン | ― | -5 |
ラトビア | -8 | -20 |
リヒテンシュタイン | -8 | -16 |
リトアニア | -8 | -20 |
ルクセンブルグ | -8 | -20 |
マルタ | ― | -20 |
モナコ | -8 | -22 |
オランダ | -8 | -20 |
ノルウェー | 1 | -16 |
ポーランド | -6 | -20 |
ポルトガル | -8 | -20 |
ルーマニア | -8 | -20 |
スロバキア | -8 | -20 |
スロベニア | -8 | -20 |
スペイン | -8 | -20 |
スウェーデン | -8 | -20 |
スイス | -8 | -15.8 |
ウクライナ | 0 | -24 |
カナダ※4 | -6 | ― |
日本※4 | -6 | ― |
ニュージーランド※4 | 0 | ― |
ロシア※4 | 0 | ― |
米国※3 | ― | ― |
トルコ※3 | ― | ― |
下線:市場経済移行国(EIT)、青ハイライト:EU加盟国、灰色ハイライト:不参加
※3.アメリカ、トルコは、京都議定書の参加資格を有していない。
※4.カナダ、日本、ニュージーランド、ロシアは第2約束期間を批准していない。