COP23:炭素市場に関する閣僚宣言 署名国共同会合
開催日時
2017年11月16日(水)17:00~18:00
開催場所
ジャパン・パビリオン
主催
環境省
概要
ドイツのボンで開催されている「国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)」において、「炭素市場に関する閣僚宣言」の署名国共同会合が開催されました。既署名国であるニュージーランド、カナダよりそれぞれオピト・ウィリアム・シオ太平洋島嶼国担当大臣、ステファン・ディオン大使(前外務大臣)が参加するとともに、シンガポールよりマサゴス・ズルキフリ環境水資源大臣が参加し、新たに本取組への参加が表明されました。
発言要旨
○日本(高橋康夫環境省地球環境審議官)
地球温暖化を防止するためには、今世紀中に世界経済を脱炭素化させることで、世界全体の温室効果ガス排出を大幅に削減することが必要。歴史的な合意であるパリ協定では、今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成するために、利用可能な最良の科学に基づいて、各国が迅速な削減に取り組むよう規定。この目的のためには、炭素市場を活用した排出削減活動へのインセンティブを与える取組が重要。パリ協定第6条では適切なアカウンティング・ガイダンスとともに、環境十全性の確保が求められている。これまでにも各国は、排出量取引制度、炭素税、国際的な市場メカニズム及び規制的手法等、それぞれの国内事情を踏まえて様々な政策と対策を実施。これらの取り組みの有効性を確保するべく、有志各国が集まり知見を共有するとともに、得られた教訓を学びあい、世界へ発信していくことは、パリ協定の目的を踏まえた具体的な排出削減に向けて非常に有益。今後も炭素市場を効果的かつ効率的に実施して行くためのポジティブなメッセージを発信していきたい。
○カナダ(ステファン・ディオン大使(前外務大臣))
カナダは炭素価格や市場メカニズムに前向きに取り組んでいる。これは投資機会を提供するものであり、雇用及び民間資金の導入を促進するものである。UNEPの報告書が示すとおり、2度目標のレベルに向けて排出削減の取組を促進する必要がある。IEAによれば、2030年時点で1トンあたりの炭素価格はOECD諸国で100ドル、新興国で75ドルとすることが必要とされている。炭素価格がないことは大きな問題である。市場メカニズムの活用の観点からパリ協定6条の交渉の進捗を重要視している。透明性やアカウンティング・ガイダンスによって市場メカニズムの活用に確信と信頼を醸成し、定量化され、検証された、真の排出削減をもたらす環境十全性を有する緩和成果を創出することが重要。COP24でパリ協定の実施指針を採択することが必要であり、今次会合においてSBSTA議長に要素案のドラフト権限を与える結論を得られたことを歓迎する。なお、カナダは炭素税を2018年より導入し、毎年10ドルずつ価格を引き上げ2022年に1トンあたり50ドルとする。炭素税によるかETSによるか、手法の選択は州政府にゆだねられているが、取組が進まなければ連邦政府として実施を確保する。2030年には石炭火力発電を撤廃する。炭素価格なしではこれはできない。
○チリ(ロドリゴ・ピザロ環境省情報経済局長)
チリはこの4年間で環境政策について大きな変革を経験した。市場メカニズムは問題ではなく、解決策であるということが認識された。炭素税を地域でいち早く導入する。1トンあたり価格は5ドルであり、まだ少額ではあるが、大きな効果がある。例えば、既に電力会社は石炭で発電しないことをコミットした。また将来は税率を増大させる予定。炭素価格や市場メカニズムについてパシフィック・アライアンスとしてメキシコ、ペルー、コロンビア、チリの4カ国が協力している。将来、これらの国や、北米、さらにはその他の国々ともリンクしていく可能性がある。気候変動アクションプランを実施しており、炭素価格だけではなく、再生可能エネルギーの導入促進など含め、緩和のための様々な施策を実施している。2050年には再生可能エネルギー100%とする。
○イギリス(アーチボールド・ヤング、ビジネス・エネルギー・産業戦略省首席交渉官)
1990年からこれまでに42%の排出削減を行う中、67%のGDP成長を達成した。ETSについて、環境十全性をもたらすためには堅固なMRVが基盤となる。EUETSの仕組みの改善も進めており、たとえば市場安定化リザーブの導入などを通じて、状況に対応したより安定的な価格シグナルを送ることができる。パリ協定6条2項における協力的アプローチは野心を向上するために大きな可能性を持っている。この検討に当たっては環境十全性が核心であり、ダブルカウントの防止が重要。これを防止しないと排出が増大するからである。ICAOの取組みについてもダブルカウントの防止が必要。他国への支援について、世銀の取組であるPMRやTCAFへの資金拠出、またODAを活用した支援を積極的に実施している。
○ニュージーランド(オピト・ウィリアム・シオ太平洋の人々のための大臣)
パリでのCOP21においてこの閣僚宣言を発足させた。ニュージーランドとして、ビジネス界に対する明確なメッセージを発することを意図していた。市場メカニズムの活用は気候変動対策として重要であり、そのためには環境十全性の確保が必要である。取引される削減成果は真で信頼性のあるものでなければならない。シンガポールに新たにこの宣言に賛同いただいたことを歓迎したい。
○シンガポール(マサゴス・ズルキフリ環境水資源大臣)
シンガポールの排出量は世界の0.11%であるが、これを持って気候変動対策が重要ではないということはない。協調して取り組むことによって次の世代に地球をつなぐことを可能とする。シンガポールは気候変動に脆弱であり、海面上昇の影響も受けている。またシンガポールは水やエネルギーの確保に制約があり、小国であるため代替エネルギーの確保が難しい。しかしながら、気候行動計画を昨年策定し、NDCの実施に向けて取り組みを進めている。たとえば太陽光発電の設備容量を2020年までに3倍、さらに1GWまで拡大していく。R&Dへの投資も加速する。炭素税のための法律の整備に向けて現在パブリックコンサルテーションのプロセスにある。排出源の80%をカバーする計画で、歳入は気候変動対策に活用する。炭素税と国際炭素市場とのリンク、つまりクレジットの活用も行いたい。市場メカニズムは費用効果的な低炭素成長を促進するものであり、より多くの国が導入することにより、より多くの機会が提供される。そのためにも、真で検証可能な排出削減をもたらし、ダブルカウント排除することが必要。宣言に参加することにより、お互いが知見を共有し学び会う機会をつくりたい。